「森林を歩くと気持ちがいい」 …ごく当たり前のようなことですが、なぜ気持ちよいのでしょうか?

 昭和57年に始まった森林浴は、提唱直後から健康に良いとされてきました。しかし、人間の体にどのような生理的変化が起こっているのか、これまではよく解っていませんでした。
 一方、最近の病症は、感染症から生活習慣病へ推移しています。これは投薬などでは予防が難しく、心身を健康に維持するための有効策が求められています。

 治す医療から予防する医療へ。この転換の方法として注目されたのが森林浴です。

 森林セラピープロジェクトは、森林浴の効用を明らかにしながら、健康作りへの効果的なメニューの確立をめざす事業です。

 森林セラピープロジェクトが具体的な事業として始まったのは、2004年3月末。林野庁をはじめとする関係機関と専門家が集い、森林セラピー研究会が設立されました。
 この研究会には全国から森林を持つ自治体・森林に従事する関係者も参加し、年複数回の情報交換を行なっています。
 これまで森林の持つ効能、木材や木工製品など、森林の副産物がもたらす効果は数多く、また断片的に知られていました。これら国内外の関連情報が、森林セラピープロジェクトを核として集まりつつあります。情報量は3000件を超えるといわれます。

 また、森林浴には運動量や環境の情報も欠かせません。それぞれの専門家による研究発表により、どのような森林浴メニューが効果的なのか、検討されています。
 さらに森林の映像、香り、木製品などにも生理的効果が認められたため、ソニーPCLや九州大学など、専門機関により研究が進められることとなりました。
 生理実験調査の面では、つくば市の森林総合研究所の研究チームが中心となり、全国の森林で同一の条件を用いる実験方法の確立を進めました。
 実験は12名の被験者により、都市部と森林との比較によって行なわれます。2004年には千葉・岐阜・長野などにおいて予備実験を実施。その結果、森林の環境が心身にリラックス効果をもたらし、ストレスを減らすことが実証されました。

 プロジェクトは次の段階に進み、2005年初頭、いよいよ全国から森林セラピーを推進する森林を募りました。上松町を含む約30箇所の自治体・団体が全国から応募し、第1期森林セラピー基地・ロードの実証実験が始まりました。
(画像提供:森林総合研究所)
 
 
 今回、森林の効能を調査するために協力して下さったのは、20歳前後の男性の方々。より生理的反応が大きな若い年齢層が選ばれました。メンバーは6名ずつの2班に分かれ、2日間の日替りで、都市と森林で同じ実験を行ないます。

 実験では、運動時(歩行)と静態時(座観)で心身の状態を計測し、ストレスの増減などに注目。採決はストレスの原因となるために避け、唾液に含まれるストレスホルモンなどを分析しました。
 同時にその森林が持つ環境を、計測機器を用いて数値化。フィトンチッドやマイナスイオンの量、騒音、気温、湿度など、実験時における都市と森林の環境を記録して比較します。

 この実験は森林の効能を実証するとともに、その森林が森林セラピー基地・ロードとして有効かという、認可に向けての重要な根拠となります。
 各森林からは、実験地付近の都市の大気汚染状況、滞在に適した近隣の観光メニュー、景観、植生など、分析のためのデータが数多く寄せられました。

 第1期の候補地で実施された実験は、被験者を用いた生理実験と、機器による予備調査に分類されます。
 この実験に加え、同じ長野県の飯山市では、日本医科大の李先生のチームによる特別実験が実施されました。

 この特別実験は、幅広い年齢層から「特に疲れている・ストレスにさらされている」と認められた被験者を募り、森林浴による血液中の変化まで調査されました。
 実験の結果、2日間の森林浴により免疫細胞の活性化率が52.6%も向上していることが判明。さらに抗がんタンパク質の増加も明らかとなり、世界で初めて、森林浴ががんの予防などに活用できる可能性が示されました。

(画像は飯山市の「なべくら高原・母の森」)

 第1期の森林セラピー基地・ロードに立候補した候補地は、ネットワーク会議を設立し、情報交換を進めています。
 医療と森林を結び付けている先進事例、各地の森林で開催されているイベントや観光資源などを報告しながら、将来の森林セラピー推進に向けての検討を行なっています。
 森林セラピーを導入するための入口は、各地によって様々。それぞれの森林と地域色を取り入れた、多様な森林滞在メニューが求められています。
 本格的な動きは2006年春の「第1期森林セラピー基地・ロード」の誕生以降となりますが、意欲ある森林では、すでに認定前から胎動が始まりました。

 上松町では、昭和57年から森林浴に注力し、多くの観光客の皆さんをお迎えしました。現在も年2回の森林浴大会を開催し、好評を博しています。このイベントを活かしつつ、医療機関との連携により、観光面から付加価値を生み出していきたいと考えています。

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